女三世代

田舎に左遷され、久しぶりの実家が戦場だった私の話でもお聞きになって。

女三世帯

それはそれは華々しい引っ越し歴でした。

 

くそ田舎の代名詞、ちばらき連合の傘下に位置する、流山(あの頃は本当に森しかなかったのに)から、突然の広島への島流し(本州だけど)、からの返り咲きでまさかの東京。しかも、巣鴨。アノおばあちゃんの原宿こと巣鴨。そこから数十年ほど都会の甘い汁を吸い、自分が田舎者であることもすでに前世レベルの話で、原宿、池袋、吉祥寺でブイブイ言わせていた時期も私にはありました。

 

からの、所沢。なぜか、所沢。いや、でも新宿、池袋全然出やすいし。全然、田舎じゃないし。ていうかむしろ、疎開くらいのノリで、ホームは東京ですから。

 

と、思っていた時期もありました。

 

そこから紆余曲折ありまして、このたび4月よりまた、数年ぶりの広島へと引っ越しをすることになりました。しかも、前回はまだ、まだ!市内だったのにもかかわらず、今回は東京の人からしたら、読めないような市へと引っ越し(という名の左遷)が決まってしまったのです。わず。

 

はい。すでに腰を下ろしましたよ。さすがにあきらめました。ゆめタウンだってガンガン行くし、家の前でたむろうゲジゲジは速攻殺せるし、お好み焼きだって焼けます。もう、根を張る準備も万端です。

 

皆さんは佐藤春夫の「田園の憂鬱」という小説をお読みになったことはあるでしょうか。昔取った杵柄、わたくし、東京の大学(ここ重要)で日本文学を専攻していたものですから、日本文学を多少なりともたしなんでおります。そんなわたくしの、トラウマ作品の第3位がこちら(1、2位はまたいつか)、佐藤春夫「田園の憂鬱」です。

 

まだお読みになっていない方(ええもちろん、手には取ったことはあれど、まだ読んでないんだよねっというのはよくわかります。もちろん)のために、スリーステップでご紹介します(某ニキビケアより簡単です)。

 

1都会のストレスがひどいから田舎に行こう

2田舎っていろいろめんどくさい

3発狂

 

なんということでしょう。今の私はこれを地で行っている有様です。目も当てられない。発狂まで秒読み。憂鬱なんてもんじゃない(タイトルからしてそういえば不穏でしたね)。そのうち私にも「おお!薔薇、汝やめり」なんて聞こえてくるかもしれません。そうなっても東京へはもう帰れないのです。「おお!東京、汝遠い」

 

さて。ここまで読んでくださる方がいたら、本日のタイトルは「広島の憂鬱」ぐらいにしとけばいいだろう。と思われるかもしれません。

 

もう一度確認してみましょう。「女三世帯」。これが今日のタイトルです。(華々しくも、この部六の最初の記事ですどうぞよろしく)

 

もしかしたら、はっと、勘のいい方は気が付いたかもしれません。

 

そうです。実家なのです。数年ぶりの実家。というか、この家に住んだことはないので、実家ではない。しかし、母がいる。祖母がいる。実家のような安定感。そんなものははなからない。

 

「いいねえ、実家って楽じゃん?」

「ごはんとか出てくるんでしょ?」

「おばあちゃんから、お小遣いもらえちゃう!」

 

全員底に並んで、はじから首を切り落とさせてください。森実先生風に表現するならば「恥を知れ。しかるのち、死ね」もしくは「くたばれ」でしょうか。

 

あなたは知らない。女三世帯が共に暮らすという、地獄を。八寒地獄より、ブリザードが吹き荒れるのです。その主な原因は、母と祖母の仲が壊滅的に悪いことにあるでしょう。水と油。犬とサル。ルフィーとエネル。…

 

この永遠に決着のつかない戦いに私は今巻き込まれているのです。

 

え?ルフィーとエネルに関してはルフィ―が勝った?圧倒的勝利?

 

ネタばれはやめてください。

 

しかし、良い疑問です。そうです、あの有名な戦いでは(私は詳しくは知りませんが)ルフィ―の圧倒的ぼこりのもと、勝利しました。正しいのはルフィ―、勝つのもルフィ―…察してください。

 

そうなのです。どちらにも譲れぬものがあるなら、私はおとなしく行司として、「のこったのこった」と再度ステップを踏みまくりながら勝負の行方を見守る覚悟はあります。

 

しかし、この戦い。ひいき目に見ても。どう差し引いても。

 

母に分が上がっているのです。

 

 

しょうがない。昔から彼女は論理武装し、非暴力を徹底とした、名づけるならば弁護士ガンジーといった人でした。小学校3年生の時に、自分母親とは合わない。頼ることはできないと英断を下した女性でした。(顔を洗う、歯を磨くということすら教わったことがないようです)

 

時代が時代なら、きっと彼女は何かしらの長として、その敏腕をふるっていたでしょうし、もし男に生まれていたのなら、日本は無理でもこの中四国地域では知らぬ者はおらぬほどの人物になっていたかもしれません。

 

そんな、トンビが鷹を生んでしまった我が家で、とうとうトンビVS鷹の戦いが幕を開けようとしているのです。

 

え?私ですか?

 

凡人代表なので、戦況次第ですかね。

 

とにもかくにも「田園の憂鬱」ぜひお読みください。今年田舎に左遷された人は特に。